脳血流量は語る −かくれた謎をひも解く−
販売価格: 4,400円(税込)
商品詳細
脳の疾患や健康状態を表す脳血流量は,脳機能を支えるインフラである.それゆえ脳疾患の診断ツールにはなりえても,マイナーな存在であった.しかしイメージング技術の発展と共に,脳血流量には「揺らぎ」があることが判明.この揺らぎが,脳の神経細胞の活動領域に対応していることが分かってきた.寡黙と思われていた脳血流量が,実は脳の活動を雄弁に語っていた代弁者であった.本書はその語りから,脳の秘密をひも解いていく.
【目次】
はじめに
読者の皆様へのご案内
1 プロローグ
A 脳血流量から見える世界
B 待望される異次元のモデル
C 筆者が脳血流量測定を始めた時代
2 脳血流量の素顔
A 酸素の大食漢を養う脳血流量
B 脳のゴミを掃除する脳血流量
C リモート制御される脳血流量
D 疾患や加齢を映す安静時の脳血流量
E 神経活動を映す脳血流量のゆらぎ
F 偶然に発見された内因性信号
G 神経活動の実験には邪魔だった脳血流量
H 損傷には過敏な脳血流量
3 脳血流量の通り道:脳血管
A 構造と基本性能
a.血管の構造
b.血管径と血圧と流速
B 脳血管とその周辺組織
a.脳を守る血液脳関門(BBB)
b.BBBの障害と脳浮腫
c.神経細胞と脳血管を連結する神経血管単位(NVU)
d.神経細胞を支えるグリア細胞
e.微小血管を補佐するペリサイト(周皮細胞)
C 脳動脈と脳静脈それぞれの役割
a.脳血管ネットワーク
b.主幹脳動静脈の役割
c.脳表動脈と穿通動脈の役割
d.緊急時に作動する側副血行路
e.灰白質と白質で異なる毛細血管密度
D 赤血球による酸素交換
a.ヘモグロビンの酸素化と脱酸素化
b.肺循環と体循環の役割
c.酸素解離曲線
d.ヘマトクリット値
4 脳血流量を測る:歴史
A 脳血流量測定の黎明期
a.脳容積の変化を測定する試み
b.脳血流量の数量化の試み
B 不活性ガスによる脳血流量の定量化
a.笑気ガスによる定量化
b.笑気ガスの麻酔効果
c.RIトレーサーというブレークスルー
d.新しい方法を開発できた背景
e.キセノン133脳血流量の日本への導入
f.キセノン133の限界
C トモグラフィー装置の開発
a.トモグラフィーの夜明け
b.筆者らの試み
c.高速SPECTの盛衰
D 非侵襲化は時代の流れ
a.RI導入の先見性
b.時代と共に変化する「侵襲的」の定義
c.PETとSPECTは実用化へ
d.新時代を開くPET装置
5 脳血流量を測る:理論
A 通路を流れる道流と灌木叢を流れる灌流
a.道流と灌流の単位
b.通路を流れる道流の測定
c.灌木叢を流れる灌流の測定
d.道流から灌流へ:ミクロからマクロへの融合
B 血流量測定に使用されるトレーサー
a.拡散性トレーサー
b.非拡散性トレーサー
c.マイクロスフェア型トレーサー
d.ケミカルマイクロスフェア型トレーサー
C 脳血流量を計算する
a.脳血液分配係数(p)
b.初回通過摂取率(E)
c.トレーサーの平均通過時間から計算する
d.トレーサーの分布密度から計算する
e.絶対値測定と相対値測定
f.集積分布の半定量的評価
D 核医学のかなめ:RIトレーサー
a.トレーサーアマウント
b.比放射能
c.トレーサーかプローブか
d.核医学の測定感度は高いか
E トレーサーをまとめるコンパートメントモデル
a.トレーサーが分布する仮想部屋:コンパートメント
b.酸素15ガス吸入法のコンパートメントモデル
c.神経受容体のコンパートメントモデル
d.トレーサーのインプット関数
6 脳血流量を測る:方法
A SPECTによる脳血流量の測定法
a.キセノン133による定量的脳血流測定法
b.ヨウ素123標識IMPによる定量的脳血流量測定法
c.ケミカルマイクロスフェア型トレーサーによる測定法
B PETによる脳循環代謝の測定法
a.超小型サイクロトロンの登場
b.PET装置の実用化
c.酸素15標識ガス定常吸入法測定法
d.酸素15標識ガス短時間投与法測定法
C RIを使わない脳血流量測定法
a.コールドキセノン吸入法
b.MRIによる動脈血スピン標識法(ASL)
c.CTやMRIの血管造影剤による測定法
d.近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)による脳血液量測定法
e.超音波による道流の測定法
D 動物実験での脳血流量測定法
a.水素クリアランス法
b.オートラジオグラフィ(ARG)法
c.透過光の平均通過時間による脳血流量測定法
d.レーザードプラー血流計(LDF)
e.レーザースペックルイメージング(LSI)
f.共焦点顕微鏡と二光子励起顕微鏡
7 脳を守る脳血流量
A 脳血流量を調節するメカニズム
a.頭蓋内の脳血流量調節
b.微小循環での脳血流量調節
B 健康脳の脳血流量調節
a.灌流圧調節(自動調節機序)
b.化学性調節
c.神経原性調節
d.代謝性調節
C 脳血管障害時の脳血流量
a.貧困灌流と贅沢灌流
b.循環予備能と代謝予備能
c.脳梗塞の脳血管閉塞のタイプ
d.脳血流量の再灌流治療
D 脳組織が異常時の脳血流量
a.ノーリフロー現象
b.脳神経変性疾患における脳血流量
c.異常たんぱく質集積による認知症の脳血流量
d.血管性認知症の脳血流量
8 脳を写す脳血流量
A 神経活動と連動する脳血流量
a.フィードバック機序
b.フィードバック機序のほころび
c.神経活動時の好気的解糖について
d.フィードフォワード機序の台頭とフィードバック機序との統合
B BOLDコントラストという新大陸の出現
a.BOLDコントラストの発見
b.BOLDコントラストの本質
c.BOLD信号は天からの贈り物
d.BOLD信号によるパラダイムシフト
e.BOLD信号のダイナミックレンジ
C 神経活動と脳血流量を結ぶミッシングリンク
a.脳血流量は神経活動を代弁するか
b.脳血流量信号と神経活動の比較
c.脳血流量信号の時空間分布
d.脳血流量信号の加算法則
D 安静状態が厄介者から新鉱脈へ
a.頭痛のタネだった安静状態
b.安静状態が切り開く新世界
9 エピローグ
A 熱気のシフト
B 脳活動の表現形
C 残る疑問点
D 氷山の一角
E 未知の鉱脈
F おわりに
参考文献
引用文献
基本用語
脳血流量測定に深く関わった人物
索 引
商品詳細
著者 | 菅野巖 著 |
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出版社 | 中外医学社 |
発刊年 | 2020年07月 |
ISBN | 978-4-498-32840-2 |
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